前習った事と真逆の事をコーチが言ってる!
何が正しいの?
なんで人によって教え方が違うの?
以上のような、お悩みを解決します
本記事の内容
- アルペンスキーの指導法について
- 複数の指導法が存在する理由
- 異なる指導法の消化方法
- 上達方法の一例
様々な指導法について
アルペンスキーの練習に打ち込んでいる皆さん!
皆さんの中には、複数の指導者からスキーの技術論を教わっている人がいるかも知れません。
部/サークルの合宿と所属しているレーシングチームの練習において指導者がそれぞれ異なる場合や、複数のレーシングチームに所属している場合などですね。
中には指導者に直接教わってなくとも、インターネットや書籍の情報にアクセスし、技術論を学んでいる熱心な選手もいる事でしょう。
そして、ある程度スキーの技術論の情報に触れていると、このような違和感や疑問を覚える事があるかも知れません。
あれ?○○と△△で言っている事、矛盾してない??
速さを競うアルペンスキーと、正確性と美しさを競う基礎スキーの間で技術論が異なる事はよく見受けられます。
しかし、同じアルペンスキーに関する技術論においても、真逆の事を主張している二つの情報源が存在したりもします。
冗談のように聞こえますが、かなり頻繁に見かけます。
例えば、スキー板に力を加える「荷重」の手法について、二つの情報源がそれぞれ以下の技術を推奨していたりします。
- 伸ばし荷重:切り替えで脚を抱え込み、ターンマックスで脚を伸ばす荷重方法
- しゃがみ込み荷重:切り替えで脚を伸ばし、ターンマックスでしゃがみ込む荷重方法
また、中には「常に脚を伸ばしたまま滑るべき」といった、二つの技術の中間ぐらいを推奨する情報源もあるかもしれません。
熟練者の方はこれを聞いて、「ハイハイ確かにそうだよね」とすんなり受け入れられるかもしれませんが、まだ自分の中の技術論が確立していない初心者の方にとって、真反対の技術論が存在する事は死活問題でしょう。
どの情報源を信じればよいのか、人間不信ならぬ技術不信に陥る事があるかもしれません。
指導法が異なる理由は?
では、何故異なる技術論や指導法が存在するのでしょう?
これには、複数の原因が混在している事が多いですが、それぞれについて見ていこうと思います。
目標としている技術が異なる
これは一番簡単な理由ですね。
理想とするゴールの滑りが根本的に違う場合です。
このような場合は、技術の第一歩目から指導法が異なるかもしれません。
アルペンスキーにおける技術の正解は、一番速く滑れる技術なので、理論的には誰が教えても同じになるはずです。
(厳密には、最速が一意に定まるかはわかりませんが…)
しかし、用具に依存するスポーツである事から、その正解は刻一刻と変化しています。
何十年前のアルペンスキーの映像と近年の映像を見比べてみたら、用具の性能が明らかに異なっている事が見て取れると思います。
また、その時、その瞬間のアルペンスキーの正解(理論的に最速の滑り)を知っているのは神様のみであり、人間が100%正しく理解する事は不可能に近いです。
従って、多くの技術論は、その時一番速い選手の滑りをベースに組み立っている事が多いです。
タイム制の競技あるあるですね。
従って、そもそも刻一刻と正解が変わっている点、その正解を完璧には理解できない点といった二つの理由から、複数の技術論で指導法が異なる事があります。
また、現実世界では、選手に応じて体型などのフィジカル面が異なる事から、その選手に適した正解といった観点で考えると更に複雑になります。
更に、速さに限定せず、怪我のリスクが少ない滑りを正解としている指導法もあるかもしれませんね。
ただ、実際この観点で一番多いのは、昔の滑り方を推している技術論と、最新の滑り方を推している技術論の間で衝突が起きているケースのように思われます。
あまりここで滑り方の内容については深入りはしませんが、「最近の板は性能が良く、過度に力を加えると逆にタイムロスになってしまう」と主張する技術論も存在します。
異なる道筋を辿ろうとしている
次に、同じ技術を最終的な目標 / ゴールに設定していたとしても、異なる過程を歩もうとしている場合もあります。
ゴールを山の頂点だとした時、登山方法は一通りではなく、無数にある事がありますよね?
それと同じ現象です。
登山のある部分を局所的に切り取ったら、同じ目的地を目指していても、二つの道筋が真逆を行っている事があるかもしれません。
ある動作を身体に染み込ませる為に、「最終的には矯正するであろう動作」を意図的に行うといった練習が行われる事があります。
身体を大きく使う練習の為に、力が上に抜けるほど、上下動を意図的に大げさに行う練習などが例としてありますね。
このように同じゴールを目指していても、指導法に応じてその道筋は異なる事があります。
特にスキーコーチなどの技術指導者の場合は、自分自身が辿ってきた道筋が一番教えやすい事から、各々が自分の滑っている(滑っていた)感覚や意識を取り入れている場合が多いですね!
また、指導者によっては選手の技術レベルや目標に応じて、教える内容や順番を変えている事があるかもしれません。
このような場合、同じ指導者の技術論の間でも、一見矛盾しているように感じてしまう事がありますね!
同じ滑りでも異なる解釈をしやすい
一番厄介なのが、これだと考えています。
例え同じ滑りを真似ようとしていても、その滑りの解釈が人によって異なってしまうという現象です。
多くの場合、滑りを観察する場合、ビデオや肉眼の視覚的情報を用いる事が多いです。
しかし、スキーは外力を利用する事から、視覚的情報から得られた結論が、実際選手が行っている動作と異なるといったエラーが発生しがちなスポーツです。
遠心力を用いて傾いている内傾角という動作を、自分の関節運動だけで完結する動きだと考えてしまう初心者の選手が存在するという事が一つの例ですね。
より複雑な動作になると、上級者でも見誤ってしまう事があるので、初心者がなんとなく見て理解できるような簡単な話ではない事もあります。
従って、視覚的情報だけに頼る事は危険な場合があります。
更に、見本となる選手の意識が必ずしも別の選手の上達過程において「正しい」かと言われると、そうではない事もあります。
超上級者の場合、運動はほぼ無意識の次元で行っている場合が多く、意識付けをして意識的に行っている運動の割合は非常に限られている事が多いです。
従って、同じ意識付けで初心者が滑っても、チグハグな動作になってしまう現象が発生します。
少し脱線しましたが、同じ滑りを参考にしていても、それを分析する人によって、それぞれ異なる解釈をしてしまうから技術論が異なってしまう、という現象についてここでは説明してきました。
様々な指導法の受け入れ方は?
様々な指導法がある理由を解説しましたが、では結局何が正しいのでしょう?
技術向上の為には何を信じるべきでしょう?
これに関しては、二人が同じ指導法を受けたとしても、それぞれに異なる効果が出る事もある為、「万人にとって絶対的な正解となる指導法は存在しない」といった事実を受け入れるところから始める事が良いかも知れません。
99%の人を上達させることが出来る名指導者に教わっていても、教わる側が逆の1%に当てはまっていたら、残念ながら上達する事は叶いません。
従って、トライアルアンドエラーの精神で、繰り返し様々な技術論に触れ、それを試す事で自分に適した指導法に巡り合う事が大切かもしれませんね。
とりあえずやってみる。
一見思考放棄の愚策に聞こえるかも知れませんが、意外とこの手法が上達の最短ルートになる場合もあります。
また、いくつかの技術論に触れた際、複数の指導法の間で共通している項目に遭遇するかもしれません。
それは、「板をずらさないで、カービングで滑った方が速い」のような内容かもしれません。
このように、多くの技術論において採用されている技術内容は、「アタリ」である確率が高いので、このような技術内容から優先的に習得していくという上達手法もありますね!
更に、自分の現時点の知識では理解しきれない技術論に遭遇した場合、その技術論を提唱している人とコミュニケーションを取る事で自分の理解が深まる事もあります!
あまりしつこいと嫌がられる可能性はありますが、何故そうなるのか?、と質問してみると、その技術論の背景について学べるかもしれません。
異なる指導法に対するアプローチの一例
さて、この記事ではかなり理論チックに理屈っぽく書いてきました。
自分の上達にどう活かせばよいかわからない、となってしまっては元も子もないので、ここでは一例として私が異なる指導法に適応した過程を書いていきます。
アルペンスキー1~3年目
・複数の指導者にそれぞれ短期的に教わり続ける
・どの技術論も本質的な深い理解には至らず、表面的な理解のみに留まる
・インターネットでも、個人が解説している技術ブログを読み漁る
・情報過多に陥り、どの情報が正しいかが分からなくなる
アルペンスキー4~6年目
・自分が「合う」と直感的に感じた指導者と巡り合い、その人の下でのみ練習を行う
・シーズン中からオフシーズン中まで、一年中同一の技術論に触れ続ける
・自分の滑りのコアとなる技術が身に付く
アルペンスキー7年目~
・異なる技術論に触れた際、どこがどう違うか、どこが同じかを理解出来るようになる
・自分に適した意識付けや滑り方を異なる技術論から良いとこ取り出来るように
・自分なりの滑り方が確立していく
簡単に説明すると、私は複数の技術論の間で迷子になっており、あまり上達しない最初の数年間を過ごしました。
そこで、ある一つの技術体系を一定期間100%信じ、それについて学ぶ事によって、自分の滑りのコア/核となる滑り方を身に付けました。
そのコアが身に付いてからは、様々な技術論に触れた際、自分のコアの滑り方と比べる事で、「この部分をこの技術論ではこう考えるんだ」と理解でき、各技術論から良いとこ取りが出来るようになりました。
そのようなプロセスを経て、自分だけの滑り方/技術論を身に付けたという形になります。
要するに、まず最初に一つの技術論を深く学び、比較対象を作る上達方法を歩んだということになりますね。
必ずこの過程を踏む必要がある訳では全くありませんし、なんなら、かなり遠回りしたと自負しています笑。
しかし、私の経験が一例として役に立てば幸いです!
まとめ: 自分なりの解釈方法でアルペンスキーを楽しもう
いかがだったでしょうか?
本記事では、アルペンスキーにおける様々な指導法について簡単に説明してみました。
最後に、内容をおさらいしていきましょう。
- アルペンスキーには様々な指導法が存在する
- アルペンスキーは同じ滑りでも異なる解釈をしやすい
- 様々な技術論の共通点は参考になる事が多い
- 一つの技術論を深く学ぶ事で、自分の滑りのコアが出来る
是非様々な技術論に触れ、自分だけの技術論を作り上げていってアルペンスキーを楽しんでください!