【注意点】
マインドセット編では、具体的な技術論には触れておりません。
アルペンスキーでは、タイムという定量的かつ絶対的な基準が存在するため、滑りの「型」に統一された正解はないと考えています。
その為、「あらゆる技術論の指導」のもとで応用できる知識や考え方を出来る限り客観的に解説する事をこの記事では重視しています。
アルペンスキーに慣れてきて、次のシーズンは計画的に過ごしたい!
いつからシーズンインするべき?
昨シーズンは気がついたらレースの日だった!
以上のような、お悩みを解決します
本記事の内容
- スケジュールの必要性は?
- スケジュールの立て方は?
- 不測の事態について
- シーズンのスケジュールの一例について
シーズンのスケジュールを立てる必要性は?
アルペンスキーヤ―としての生活に慣れてきた皆さん。
皆さんは昨シーズン計画通りにスキーライフを過ごせましたか?
勿論!という人もいれば、後悔が残る人もいると思います。
今回はシーズンの滑走スケジュールという内容について説明していきます!
スケジュール立て?そんなの必要ない!その時その瞬間滑りたい所で滑る!
という考え方のアルペンスキーヤーもいるかも知れません。
それはそれでスキーライフをエンジョイする一つの手段なので、全く持って問題ないと考えています!
ただ、事前にスケジュールを決める事に様々なメリットが存在する事も事実なので、是非そのような考えの方もこのまま読み進めて下さい!
3つのメリット
アルペンスキーヤーが事前にシーズンのスケジュールを立てる事によるメリットは、大きく3つに分類出来ると考えています。
- 金銭的な目途がつく
- 交通手段や宿の確保ができる
- 上達 / 技術向上の手段となる
これらについて順を追って説明していきます。
1. 金銭的な目途がつく
アルペンスキーヤーとして活動する上では、多額の費用がかかりますよね?
シーズン前にかかる費用としては、用具の購入費・レーシングチームの会費・シーズン券の購入費・各種登録費などがあります。
これだけでも人によっては多額の出費になるにも関わらず、この競技はシーズン中にもお金が飛んでいく用途が多々あります。
一例としては、スキー場への交通費・宿泊費・リフト券代・大会(レース)のエントリー代・用具のメンテナンス代などですね。
シーズンのスケジュールを事前に立てる事で、スキーに使えるお金が増える訳ではありませんが、お金の分配方法をコントロールしやすくなります!
この月には×日滑るから大体○○円使い、次の月には…
という感じですね!
勿論スキーに使えるお金が非常に多く、支出を一々気にする必要性が無いアルペンスキーヤーの方もいると思います。
というか、そういう家庭や職業の方の割合が非常に多いスポーツな事も事実です。
(特に非雪国の選手の場合)
しかし、シーズン途中でお金が尽きて、雪上には立っているものの、練習ばっかでレース経験を積めない状況に陥る人や、いつの間にか消費者金融に借金しまくっている学生レーサーもよく見ます。
そのような経験がある場合は、スケジュール立てを検討しても良いですね!
2. 交通手段や宿の確保ができる
非雪国在住のアルペンスキーヤーの場合、練習するスキー場やレースの会場にが行く事も自体が一苦労です!
いつでも自由に使えるマイカーを持っている場合や、先輩やレーシングチームの関係者、部活動の先生などが移動手段を確保してくれている場合以外は、常に交通手段について自分でアンテナを張っている必要があります。
公共交通機関で移動する場合は、年末年始期間や連休などにおいて、既に新幹線やバスの席が埋まっていて、直前に購入する事が出来ない事があります。
知人の車に乗り合わせて移動する場合も、直前にいきなり予定を立てても、都合がつかない事が想定されます。
しかし、事前に移動日を決めている場合、公共交通機関の予約を取ったり、一緒に乗り合わせる人を見つける余裕が生まれます!
特にメジャーな大会の日程はオフシーズン中に決まっていて公表されている事が多いので、シーズンインする前にスケジュールを立てる事が可能です。
宿泊についても同様ですね!
直前に近場の安価な宿が空いて無く、遠場の宿に泊まらざるを得ない選手も多く見てきました。
僕もその一人です笑。
3. 上達 / 技術向上の手段となる
やはりスケジュールを立てる事の一番のメリットは何といっても技術向上に役立つ事です!
この観点には様々な側面があると思いますが、ここでは二つの例で説明してみようと思います。
まずは、練習と大会(レース)のバランスを取る事が出来るという面です。
多くのスポーツでも同じだと思いますが、練習ばかりやって、実践経験を疎かにする事はあまり望ましくありません。
レースでは、普段滑り慣れていない斜面を滑らないといけない上に、同じコースを1本しか滑れないといった制約があります。
コースインスペクションや出走するタイミングなど、レース独自の動きも存在します。
先ほど金欠になってレースに出られなくなる現象について触れましたが、そもそもレースに出場する回数について深く考えていない人も散見されます。
もし「先シーズンあまりレースに出なかったな」という後悔がある場合、スケジュール立てをする事で、大会慣れする事が出来るかもしれませんね!
逆に所属団体によって出場するレースが決められている場合、今度は逆にレースの割合が多くなりすぎてしまっている場合も存在します。
特に全国学生岩岳スキー大会は全期間で2週間近く日程を抑えられてしまうので、岩岳レーサーは要注意です。
滑走日数はあっても、実はあまり練習出来ていない、という状況に陥らないよう気を付けるべきですね!
次に、フリースキー練習とポール練習のバランスを取る事が出来るという面です。
アルペンスキーの練習には、コースを貸し切り、ポールを張った上での競技練習である「ポール練習」と、オープンしているゲレンデを他の利用客と一緒に滑走する「フリースキー練習」の二つに大きく分けられます。
どちらの練習も技術向上には必要ですが、レーシングチーム内でこれらの練習が、それぞれ実施されている期間は決まっている事が多いです。
一般的に多くのレーシングチームはフリースキー練習を11月など、まだ雪が不十分でコース数が少なく、コースを貸し切れない時期に行います。
そして、12月中旬以降など、積雪量が増えてコースを貸し切れるようになってからは、ポール練習のみをチームの練習として行う事が多いです。
そして4月や5月などスキー場がクローズし出してからはフリースキー練習にシフトするチームも存在します。
従って、技術向上には両方の練習のバランスを保つ事が大事ではあるものの、レーシングチームにおいて好きなタイミングでそれぞれの練習を行う事が難しいといった特徴があります。
(中にはシーズン序盤に無理やりコースを貸し切ってポール練習を行うチームや、シーズン中盤にフリースキー練習を平行して実施するチームもあります)
自分のレーシングチームにおいてどの時期にどの練習が行われているかは、事前に知る事が出来る場合が多いです。
よって、滑走日程のスケジュールを立てる事により、フリースキー練習が足りているか、ポール練習が足りているかという観点についてもケアすることが出来ます!
来シーズンの目標は?
スケジュール立てのメリットを見ていきましたが、次に考えるのは来シーズンの目標についてです。
団体戦も存在しますが、基本的にアルペンスキーは個人スポーツです。
従って、アルペンスキーヤ―の数だけそれぞれ異なる目標があると思います。
時間を使ってアルペンスキーをしている以上、誰しもスキーに対して何かしらの感情や欲求を持っていると思います。
その欲求を元に、来シーズンの目標を決めてみましょう!
「もっと雪上に立ちたい」という欲求を持っている人の目標は「滑走日数○○日」というものかもしれませんし、「色んなスキー場の景色を見たい」という欲求を持っている人の目標は「△△個のスキー場に行く」というものかもしれません。
このように、目標は必ずしも技術的なものである必要性はないと考えています。
とはいえ、勝負事のスポーツである以上、多くの選手は技術向上やレースで結果を残すといった目標を立てる傾向があります。
その目標は、「予選会を勝ち抜き、全国大会に出場する事」かもしれませんし、「全国大会で入賞する事」かもしれません。
「FIS (SAJ) ポイントの更新」や「ワールドカップ出場」を目指している上級者の選手もいますね!
次に、設定した目標が、いつ・どこで・どうやって達成可能な事かを考えてみましょう。
例えば、「インターハイに出場する」という目標だった場合、年明けに各都道府県で開催される予選会において、その都道府県に与えられているインハイの出場枠以内の順位を取る必要があります。
その大会の参加選手数は○○人程度で出場枠は△△、大会が開催されるスキー場は…
などなど、目標から様々な細かい情報が得られると思います。
得られた情報を元に、いつ・どこで・どんな経験を積み、どう行動をする事によってその目標が達成できるか、という視点からスケジュールの大枠を決める事が出来ますね!
もちろんこれ以外にもスケジュールの立て方は無数にありますので、一例として参考にしてみてくださいね!
目標から逆算したスケジュール立て!
さて、いよいよスケジュール立てです!
スケジュールを書き出す媒体はノートやPC、スマホのメモ機能などなんでも良いですし、スケジュールの粒度としても自分が納得する細かさで良いと思います。
ただ、最低限決めておくべき基本的な項目としては以下のようなものがありますね。
- シーズンインの時期(日付)
- 基本的な練習場所(スキー場)
- 出場するレースとその日程
- 練習日数と大会日数の大まかな振り分け
迷った時は、目標から逆算した上でスケジュールを立ててみましょう!
また、所属団体の合宿や、(半)強制的に出場させられる大会などがある場合は、事前にいつどこで拘束されるかを聞いておくとダブルブッキングしなくても済みますね!
スケジュール通りにはいかない?不測の事態を想定!
さて、スケジュールを立て終わって一安心かもしれません。
しかし、多くの場合、実際シーズンに入った後にスケジュール通りに完璧に物事が進むことはありません。
雪不足でスキー場がオープンしなかったり、レースがキャンセルになったり、怪我をして療養が必要な期間が出たりするかもしれません。
所属団体によっては、直前に合宿や練習会が決まる事もあるかもしれませんね。
また、事前に立てたスケジュール通りに動くことが正しい訳ではない事もあります。
あくまでスケジュールというのはシーズンを円滑に過ごす為のツールの一つです。
立てたスケジュールに固執する事が目標達成の妨げになる事もあるので、その場合は柔軟性と勇気をもってスケジュールを変更しましょう。
不測の事態に備えて、日程的にゆとりをもったスケジュールを敢えて準備するのも良いかも知れません!
シーズンプランの一例を紹介!
以下では、全国学生岩岳スキー大会に出場する、比較的時間が取れる状況下の学生レーサーのスケジュールの一例を紹介します。
このスケジュールの立て方が最適な訳では勿論ありません。
敢えて含めてない観点も、抜け落ちている観点も多数存在します。
何を重視するかは人によって異なりますので、各々がそれぞれ大切にしている部分を意識しながらスケジュールを立てましょう!
スケジュールの一例
目標:全国学生岩岳スキー大会の各種目でTop 30に入る事
全体的なスケジュール
- 11月にシーズンインし、軽井沢でフリースキー練習 / ポール練習
- 12月に草レースに出場し、大会慣れをする
- 年末年始に所属団体の合宿でポール練習
- 1月にSAJ公認大会に出場し、他の岩岳出場者と自身の成績を比べる
- 2月の高速系種目(岩岳大会)直前は高速系種目のポール練習
- 3月の技術系種目直前は技術系種目のポール練習
具体的なスケジュール
1.目標の分解
2月の高速系種目、3月の技術系種目の出場者はそれぞれ150人、350人程度であり、初心者は高速系種目には出場しない傾向がある。前年度の大会では各種目60位前後の成績だったので、30人分上達する必要がある。高速系種目は恐怖感との闘いでもある為、それに適した練習が必要である。レースは白馬岩岳スノーフィールドで開催され、コースは事前に告知されている。今シーズンは金銭的には比較的余裕がある。
2.スケジュール立て
11月上旬に軽井沢プリンスホテルスキー場の早朝練習でシーズンインする。
GS板とSL板でそれぞれフリースキー練習を2日程度行い、スキーの感覚を思い出す。
(フリースキー練習:5日程度)
11月下旬にポールを張り始めた軽井沢プリンスホテルスキー場の早朝練習でポール入りをする。
基本的なポールセットなので、基礎的な技術の確認をポール内で行う。
週末や通常営業時間はフリースキーの練習会が開催されるので、ポールで出来なかった動作を実践する。
(ポール練習:5日程度、フリースキー練習:2日程度)
12月上旬に入ると軽井沢以外にも多くのスキー場がオープンするので、レーシングチームの練習以外にも、自主的に滑りに行く事も検討する。
この期間より後は基本的にポール練習を行うので、今シーズンのフリースキーは完成させるつもりで練習する。
様々なスキー場、雪面状況、速度域で練習を行う。
(フリースキー練習:5日程度)
12月中旬には実践的なポール練習を何日か行う。
この時期の種目はGS/SL共に満遍なく取り組む。
(ポール練習:4日程度)
12月下旬には今季初のレースにも出場し、大会の勘を取り戻す。
出来なかった事を所属団体の合宿のポール練習にて復習する。
(大会:2日、ポール練習:3日程度)
1月は比較的忙しく、試験期間中の何もない日や週末に滑る。
SAJ公認大会に出場し、岩岳上位勢との順位の差や技術的な差を認識する。
(大会:4日、ポール練習:3日程度)
2月上旬に入り、大学は春休みに入ったので、雪山を拠点とした生活を開始する。
ゆっくり技術向上に励むことが出来る最後の期間なので、出来るだけ新しい事に取り組む。
(ポール練習:8日程度)
2月中旬に入り、高速系が近づいてきたので、その対策を行う。
大会のスキー場に赴き、大会コースを滑ったり、直滑降のクローチング練習などでスピードに対する恐怖感を無くす。
ポール練習は高速系に近しいGSのみを行い、スピード域の高いGSレースに参戦。
(大会:1日、ポール練習:5日程度)
2月下旬は岩岳大会の高速系種目本番。
練習通りの滑りを出せるよう、準備する。
レースが終わったら、一旦雪山を離れてシーズンの中間振り返りをする。
(大会:4日)
3月上旬にはもう技術系種目が迫っており、その対策を行う。
休止していたSLの練習も再開し、勘を取り戻した後にレースにも出場する。
大会コースを滑ったり、春雪に適した滑り方への調整なども行う。
(大会:2日、ポール練習:8日程度)
3月中旬は岩岳大会の技術系種目本番。
2本滑る技術系種目は疲労がたまりやすいので、適切なタイミングでオフを取る。
レース前日は1、2本滑るだけに留める。
(大会:6日、ポール練習:2日程度)
余力があればこれ以降も練習をするが、基本的にはここでシーズンアウト。
滑走日数(予定)
練習:50日 (フリースキー練習:12日、ポール練習:38日)
大会:19日
合計:69日
…
のような感じですね!
これはあくまで一例で、具体的な数値はかなり適当なので、これをそのまま真似するのは勿論NGですし、これを実践すれば岩岳で60位だった選手が30位に入れるという訳でもありません笑。
シーズン中の筋トレスケジュールや、各時期にかかると想定される金銭面のまとめ、各遠征における交通手段についての情報を加える事で、更に粒度の高いスケジュールになりますね!
自分なりの滑走スケジュールを作ってみてください!
まとめ: スケジュールを立てて、アルペンスキーを楽しもう!
いかがだったでしょうか?
本記事では、アルペンスキーヤ―におけるシーズンのスケジュール立てについて簡単に説明してみました。
最後に、内容をおさらいしていきましょう。
- スケジュールを立てる事には大きく3つのメリットがある
- 来シーズンの目標を決めてみる
- 目標から逆算してスケジュールを立ててみる
- スケジュールのまま行動する事が常に正しい訳ではない
スケジュールの立て方は無限大ですし、「そもそもスケジュール立てなんて必要ない!」って考えの人もいると思います。
本記事の内容はあくまで一例という事を忘れないでくださいね!
滑走スケジュール以外にも、技術向上のスケジュール立てやオフシーズンのスケジュール立てなど、他にも役立つ計画立ては沢山あるので、是非本記事の内容を応用してみてください!
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